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【書籍】『ひとりヴァイオリンをめぐるフーガ』-ジュネーヴ高等音楽院教授(「サラサーテ国際」覇者」)の波乱の青春記

2016/05/25(水) 21:53:55

2011年のLFJ(ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン)で来日。ファンも多いと聞くが、正直、名前を聞いたことがある程度の存在だった。

少なくとも自叙伝を出せる「巨匠」(将来そうなる可能性はあっても)とは言えないと、失礼ながらそう思ってしまった。

しかも、この自叙伝は22歳までの前半生のものに過ぎない。

そんなヴァイオリニストが書いた本の日本語版を、あの藤原書店が刊行した。人文・社会科学の専門書・教養書で定評のある出版社だ。

何か理由があるに違いない。

そう思ったが、本の定価を見て、購入を躊躇してしまった。

税込み 4,968円。368ページとそこそこの大部とはいえ、この値段はよくあるヴァイオリニスト本の相場の2倍を軽く超えている。

しかし、書店で手に取り、冒頭の写真ページとそこに記された著者による説明文、そして目次を見たら、これはもう買うしかないと感じた。

引き込まれるように読み進み、読了した今、最初の直感は当たっていたと確信した。

人生にはかけがえのない本との出会いが必ずある。

どんなことがあっても読まなければならない本が存在する。

テディ・パパヴラミ(Tedi Papavrami)。

1971年アルバニアの首都ティラナ生まれのヴァイオリニスト。

11歳でフランス政府から奨学金を受け渡仏。4分の3のヴァイオリンでパガニーニの協奏曲1番を弾き、パリ国立高等音楽院にトップ合格、ピエール・アモイヤル教授に師事した。

14歳の時、「1985年ロドルフォ・リピツァー国際」で第2位(最高位)。その後、16歳からコンサート活動で生計を立て、プロとしてのキャリアを確立した22歳で、「絶対に負けられない状況」の中、「1993年サラサーテ国際」に挑み、第1位と特別賞を獲得した。

ソリストとして、ザンデルリンク、パッパーノ、クリヴィーヌ等、多くの名指揮者と共演し、録音も数多い。

2008年より、ジュネーヴ高等音楽院 教授。2014年に、フランス政府より「芸術文化勲章シュヴァリエ」を受章した。

かつてはヨーロッパの最貧国と言われ、1990年代初頭まで鎖国状態にあった共産主義国アルバニアに生まれた。

「アルバニアのモーツァルト」と賞讃されたが、11歳でフランスに移住、15歳で両親と共に政治亡命を余儀なくされるという波乱の青春期を過ごした。

独裁政権下の神童としての日常、鎖国体制における初の異国との邂逅、パリ国立高等音楽院の入学試験、国際コンクールへの挑戦…。亡命への報復措置でアルバニアに残された祖父母は収容所に送られた。

活発な少年時代と愛すべき家族たちの思い出、亡命者として断絶を余儀なくされた祖国への複雑な心情、若きヴァイオリニストとして抱く将来への希望と不安。

それらが次々と織り成される様々なエビソードによリ浮き彫りとなる。

強く優しい、大胆にして繊細なヴァイオリンの音色を紡ぎ出す表現者としてのパパヴラミの至芸は、半生記を活写する文章表現においても冴え渡っている。

その類稀な文才はアルバニアを代表する作家イスマイル・カダレの作品のフランス語訳にも向けられ、演奏家や指導者としての活動の傍らで、刊行された翻訳は既に10冊を超えるという。

さらに表現者としての活動領域は俳優業にまで拡大、2002年にフランスのテレビドラマ「危険な関係」でカトリーヌ・ドヌーヴと共演した。

訳者の山内由紀子氏のあとがきの一節を紹介しよう。

「フランスの書評の多くが「大いに笑い、泣ける」と絶賛する通り、老若男女どのような読者にも突き刺さる親近感に溢れ、私達にはあまり馴染みのない世界の物語にもかかわらず、きっと、私も、僕も、そうだった、という不思議な懐かしさを抱かれることでしょう。」

さらにビバおけの読者なら、アモイヤル先生のレッスンやパリ・コンヴァトの入試、2つのコンクールのことを書いた章では、興味深い記述を随所に発見するだろう。

章末にはQRコードが印刷されていて、スマートフォンで読み取れば、著者自身が演奏する楽曲の一部が録音から抜粋で聴ける特典も付いている。

「ひとりヴァイオリンをめぐるフーガ」(藤原書店公式サイト)



ひとりヴァイオリンをめぐるフーガ


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