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「一流ヴァイオリニストでもストラディヴァリウス等のオールドイタリーと新作楽器を区別できない」 実験−第2ラウンドの結果

2014/04/19(土) 17:49:49

2010年に「インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクール」の出場者らの協力を得て行った実験で、「オールドと新作とを区別できない」との結果が出たことがあった。

その結果は発表直後から様々な論議・批判を呼んだが、これを受けて同じ研究チームが、2012年、より適切な環境と条件の下で、その検証実験を行った。

いわば実験の「第2ラウンド」と言えるもので、その結果が、4月7日に、「米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)」に発表され、日本でも一部のメディアがその内容を報じた。

「年代物のバイオリン、ソリストは新品と区別できず 研究」(4月9日付「AFPBB News 」)

「一流バイオリニストでもストラディバリウスと最近のバイオリンは聞き分けられない」(4月9日付「財経新聞」)

上記の2つのニュースを読むと、今回の実験で使用されたヴァイオリンの数を「「AFPBB News 」は12挺(新作6挺・オールド6挺)、「財経新聞」は22挺(新作13挺・オールド9挺)と伝えている。

オリジナルの記事をはしょって報じているためか、実験の経過もよくわからないので、ここでは、海外の報道("The Strad""Science"“National Geographic”)をソースに、今回の実験の詳細を整理しておきたいと思う。

・2012年のある一週、パリ郊外のヴァンセンヌにて実験を行った。

・以下のソリスト10名が実験に参加した。
Olivier Charlier (France), Pierre Fouchenneret (France), Yi-Jia Susanne Hou (Canada), Ilya Kaler (Russia), Elmar Oliveira (US), Tatsuki Narita (France), Solenne Paidassi (France), Annick Roussin (France), Giora Schmidt (US), and Stephane Tran Ngoc (France)

・集められたヴァイオリンは新作13挺・オールドイタリー9挺(うちストラド6挺、グァルネリ・デル・ジェス2挺、18世紀の他の作家製1挺)の計22挺。

・集められた22挺のうち、「選りすぐり」の新作6挺とオールド6挺(ストラド5挺・18世紀の他の作家製1挺)の計12挺をこの実験に使用。次のコンサートツアーで自分のヴァイオリンの代わりに使うとしたらどれがいいかを選んでもらった。

・まず最初のセッションで、10人のソリストが、ある弦楽奏者の家の練習室で50分間、ゴーグルをつけヴァイオリンが見えない状態で、12挺を自分の弓で試奏した。その際、自分のヴァイオリンと弾き比べても良いこととした。

・次のセッションでは、客席数300のホールのステージで50分間、12挺を試奏した。ピアノ伴奏で弾いたり、客席にいる人から感想を聞いたり、他のソリストの試奏を聴いても良いこととした。

・以上2つのセッションのそれぞれで、各ソリストは気に入ったヴァイオリンのベスト4挺と気に入らないので「却下」するヴァイオリンを選んだ。ベスト1から得点が4点、3点、・・・と与えられ、「却下」されたヴァイオリンからは1点が減点されることとした。

・集計の結果、2つのセッションでの総合1位・2位は、新作の楽器だった。総合3位は「黄金期」のストラドだが、総じて、新作の楽器の評価が高かった。最下位はストラドで、全員のソリストからベスト4挺以内の評価は得られず、逆に「却下」が8割を超えた。

・各セッションの残り12分では、各ソリストに、自分の楽器・その人がベスト1に選んだ楽器・集計でベスト1になった楽器(新作とオールドのカテゴリーで。その人の選んだベスト1とは時代を変える)の3挺を渡して、クオリティを評価してもらったが、やはり総じて新作に高い評価が与えられた。

・最後に実験では、ソリストが試奏する楽器について、新作かオールドかを尋ねたところ(考える時間は各楽器あたり30秒)、約半数が答えを間違った。(正解が31、不正解が33、よくわからないが5。何挺の楽器を何人が試奏した結果での答えなのかは不明)

・この実験結果に対して、参加したソリストの一人(最近までグァルネリ・デル・ジェスを弾いていた)は、「研究チームが集めた新作楽器は最高の品質だったと思うが、オールドイタリーのほうはどうだったのか。現存する最高の楽器だったとは思えない」と感想を述べた。

銘器だったとしても調整の具合はどうだったのか、弦はどうだったのか。さらには、オールドイタリーから良い響きを得るには時間や慣れが必要とも言われている。

22挺集めて、その中から「選りすぐった」12挺を実験に使った点(その12挺にはデル・ジェス2挺が含まれていない)も気になるし、「新作かオールドか」の識別以上に、「どの楽器を自分が好むか」に実験の力点が置かれているような印象も拭えない。

2010年の「第1ラウンド」の実験の時に指摘された問題点は、完全には解消されていないようにも思える。

ちなみに、今回の「第2ラウンド」の結果の報道を受けてのことなのか、「Gigazine」が、2010年の「第1ラウンド」の実験に参加した“violinist.com”の主宰者ロウリー・ナイルズ氏のブログ記事を紹介している。

「現代の楽器と大差なし」と判断された貴重な楽器が持つ本当の価値とは」(4月8日付「Gigazine」)

実験チームのリーダーであるクラウディア・フリッツ氏(フランスのピエール&マリー・キュリー大学で音響学を専攻)は、今回の結果を受けて、「プログラムで何の楽器を弾いているかを云々するのは、もうやめにしましょう。そうすれば、若いソリストはストラドを借りるのに必死にならなくても、キャリアを作っていくことができます」と述べたという。

「何を弾くか」ではなく「どのように弾くか」が大切。

まさにその通りである。

しかし、さはさりながら、さりながら、今晩のETV特集 を思わず観てしまう自分がいる。





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コメント
Re: 打てば道本
考えるドント様

コメントを拝読させて頂き、思い当ることがありました。
楽器をどう識別するかとか、どう鳴らすかということではなく、バイオリニストであれば恐らく「自らが楽器にどうインスパイアされるか」「楽器によってどう成長できるか」ということにこそ関心の中心があるのではないか。オールドであれ新作であれ、出る音は自分の音でしかない。その音が、楽器との「関わり」の中で、どのように変化していくのか。ストラドやデル・ジェスは、多分その「関わり」をとても豊かなものにしてくれるのではないかと思いました。
イグラーユ #-|2014/04/22(火) 00:34 [ 編集 ]
打てば道本
鼓の師匠にお聞きしたのですが、打てば道本、というストラド級の鼓があるそうです。ストラド同様、誰が
打っても鳴る代物ではもちろんありません。が、お値段は格段にお安く300万ぐらいですとか。少なく見積もってもストラドと道本が2ケタ違うのはおけいこニストの人数に比例してるのもあるよね・・といろいろ思いつつ、例の番組もしっかり録画しています。才能と努力は楽器に左右されない、とわかっているけれど、例えば成田達輝さんがガルネリにどうインスパイアされるか、見てみたいと思うのです。
考えるドント #-|2014/04/21(月) 22:26 [ 編集 ]
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