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「第62回全日本学生音楽コンクール」全国大会-講評より

2008/12/20(土) 20:07:03

「第62回学生音コン」全国大会の特集が、公式サイトの予告通り、12月20日付「毎日新聞」朝刊に掲載された。

審査幹事である和波孝禧先生の講評を以下全文引用する。

◆バイオリン部門

 ◇「個性の芽生え」に感動
 横浜での全国大会を初めて聴いて、出場者の水準の高さに感嘆した。特に小・中学生の演奏には、バイオリンならではの美しい音と、個性の芽生えを感じさせる魅力的な表現が聴かれ、強く心を動かされた。ただ、小学校の部では極めて難度の高い曲を選ぶ傾向が強まっている。あまり背伸びをし過ぎると、後の成長に悪影響を及ぼす恐れもあるので、指導者の十分な配慮をお願いしたい。

 メンデルスゾーンの協奏曲を弾いて小学校の部で第1位を得た東條太河は、冒頭からのびのびと柔らかい音色で演奏し、無理のない自然な技術、旋律の魅力的な歌わせ方など見事であった。時たま音程の上ずるのが惜しかったが、今後の成長が楽しみだ。2位の池田萌華はラロのスペイン交響曲を情熱的に演奏し、特にテンポをあまり揺らすことなく各部分の表情を色分けして見せたのが素晴らしかった。3位の高木凜々子はヴィエニアフスキの変奏曲で、和音の響きが美しく、超絶技巧もよくこなしていたが、やや背伸びをし過ぎた選曲と言えよう。横浜市民賞の菊野凜太郎にも同じことが言えるが、豊かな将来性を感じさせたし、辻彩奈、福田麻子、中添ゆきのらもよく健闘した。

 中学校の部で第1位と市民賞を受賞した大野有佳里は、美しい音と趣味の良い繊細な表情で、サン=サーンスの協奏曲を弾いた。余裕を感じさせる心地よい音楽だったが、いっそう聴き手に迫る情熱的表現も望まれる。2位の毛利文香のシベリウスの協奏曲も、難技巧を丁寧に処理し、ボリューム感のある豊かな音で作品の味を精いっぱい描き出していた。3位の周防亮介も同じシベリウスだったが、技術的には申し分ないものの、いっそう曲の性格をとらえた表現が求められよう。さらに、岸本萌乃加、坪井夏美も健闘したし、個人的には石井智大の大胆な演奏にも好印象を持った。

 高校の部では、心に届く演奏が幾分少なかったのが気になるところだ。第1位の横島礼理は、ベートーヴェンの協奏曲・第3楽章を軽快なテンポで颯爽(さっそう)と弾いたが、オーケストラとの協演を目指すのなら、さらに変化に富んだスケールの大きな表現が求められる。2位でラヴェルのツィガーヌを弾いた新山開は、好感の持てるひたむきな演奏だが、幾分小粒な印象を受けたし、ヴィエニアフスキの変奏曲で3位を得た岡谷恵光は、華やかで魅力的な音ではあるが、いっそう説得力のある表現を身につけてほしい。市民賞の石田紗樹、さらに清水公望までが大接戦となり、5人を入賞させたいほどの僅差(きんさ)であった。今回の出演者が、響きの素晴らしいみなとみらいホールでの経験を生かして、大きく飛躍してくれることを願っている。(和波孝禧)


その他、他部門の講評で印象に残った箇所を引用。

全国大会終了後の「講評会」について、ピアノ部門の播本枝未子先生の講評より。

一昨年、学生コンクール創立60年を記念して改革が行われ、全国大会参加者が従来の5地区大会優勝者だけでなく、各地区の参加者数に比例した上位入賞者に広がった。加えて今年から、表彰式終了後、個別の講評会が行われた。これは画期的な試みであると思う。

 審査員の講評を紙面に書いて参加者に渡す方法は、今日多くのコンクールで行われるようになっている。しかし、今回のようにコンクール終了直後、参加者だけでなく家族らも含め、すべての審査員と1対1で対話できるコーナーが設けられていることは極めてまれなことである。コンクールがともすると密室の審判に陥りがちであったことを考えると、この講評会は長年のそういった閉塞(へいそく)感を打ち破る風穴となるであろう。


楽曲の読み込みについて、同じく播本先生の講評より。

演奏とはなんだろうか? 作曲家は作品を仕上げていく過程でさまざまな実験や遊び、時には隠し事をする。それらはただ楽譜を追っているだけでは見えてこないことがよくある。その時、役立つものは好奇心と推理力、それに知識と経験だ。

 若い人々には、まず好奇心をもってほしいと思う。好奇心は、譜面上に書かれた記号に、なぜこんな音? なぜこんなところに休符? 等々、一つずつのディテールにこだわることにつながっていく原動力になる。それは作品へのより明解な理解の到達へとひもといていくための扉を、開けて行く道へと誘ってくれるだろう。


演奏のメリハリは「程よく」。そして、一見簡単そうなメロディーを魅力的に演奏することの難しさについて、フルート部門の酒井秀明先生の講評より。

期待して演奏を聴いたのだが、高校生たちの技術も向上しているのは感じられるにせよ、今ひとつうれしい気分にはなれない部分があった。楽譜にフォルテと書いてあるところで鋭く、音程も上ずった音を聴くことが多かったのがその理由の一つだ。

 演奏にメリハリを付けることは確かに必要なのだけれど、「程よく」という事が肝心だと思う。

 ぬるくなったスープはあまりおいしくないけれど、だからといって熱すぎると火傷をしてしまう。おいしく食べるにはちょうどよい温度というものがあるように、演奏にも過不足のない表現が求められると思う。

 そして、たくさんの音が並んでいる複雑な音型は上手に吹けるのに、音の少ない単純なメロディーでは気が緩むのかどうか分からないが、どうも今一つ冴(さ)えない演奏になってしまうことが多かったのが二つ目の理由だ。

 全(すべ)ての楽器に共通して言える事と思うが、一見簡単そうなメロディーを魅力的に演奏する事は複雑な音型を鮮やかに吹くのと同じくらいの高い技術が必要とされる。



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